自動車で旅して歩くことを、鉄道の旅よりも良いと感じる所以(注1)は、いつ出発してもいいし、どこでどれだけ立ち止まってもいいということである。鉄道の車窓から、あ、良い風景!と感心(注2)したとて、それは一瞬(いっしゅん)のうちに後方に流れ去って実際にその場所に立ってそれを味わうことは事実上不可能である。だから鉄道の車窓の風景は一種の「幻(注3)」だと言ってもよい。
しかし、名も無き道を、ゆっくりとドライブして、その行く先々に発見する風景は、自在(注4)に立ち止まり、そ して一日でも眺めていることができる。
(注1)所以:理由
(注2) 感心したとて:感心したとしても
(注3) 幻 :あるように見えて、実際には存在しないもの
(注4) 自在に:自由に
筆者は自動車の旅のどのような点がいいと思っているか。